PMBOK®第8版・新試験

テーラリングで『何を削ってよいか』迷ったとき使う、7項目の判断チェックリスト

型:テーラリング判断チェックリスト(7項目)

標準プロセスを全部やるか、現場の判断で省くか--この二択で止まっている現場は少なくありません。『フルセットでやる』を選べば工数が合わず、『省く』を選べば、省いた理由を誰も説明できないまま後で問題になります。どちらも、テーラリングという考え方の使い方を間違えています。

下の7項目は、ある手続きや成果物を『省いてよいか・簡略化してよいか』を判断するときに、その場の感覚ではなく基準で答えるための型です。新しいプロジェクトの着手時だけでなく、進行中のプロジェクトで『このレビューは要るのか』『この承認は要るのか』と聞かれたときにも、そのまま当てます。

型:テーラリング判断チェックリスト(7項目)

項目確認すること「ここまでなら削ってよい」というサイン
1. どの領域に穴が開くか特定できるか省く手続き・成果物が、ガバナンス・ステークホルダー・スコープ・スケジュール・資源・リスク・ファイナンスのどの領域に対応するかを名指しできるか対応する領域を1つ以上、具体的に言える(言えないなら温存する)
2. 代替手段を用意しているか省く手続きが本来果たす目的(合意形成・記録・検証など)を、別の軽い手段で満たせるか代替手段を1行で書ける(『簡略化』ではなく『置き換え』になっている)
3. 規模・契約形態と整合するか契約が固定価格か、外部ベンダーが絡むか、規制業種か社内だけで完結し、外部との契約条件・成果物の受け入れ基準に影響しない
4. 影響を受ける相手の合意があるか省略によって確認・報告が減る相手(スポンサー・顧客・監査)に伝え、同意を得ているか合意した相手の名前を具体的に言える
5. 判断した人が特定できるか結果が出なかったとき、『状況が悪かった』ではなく誰の判断だったかを遡れる記録があるか判断者の名前と判断した日付が記録に残る
6. 見直すタイミングが決まっているか一度決めた省略を、次のフェーズや定例のどこで見直すかが決まっているか次に確認する日(または節目)が具体的に決まっている
7. なぜ省いたかを書面に残しているか省略の理由と代替手段を、プロジェクト計画書やテーラリング記録に書いたか誰に聞かれても、書面を見せるだけで同じ説明ができる
7項目の構成と判断基準は、PMBOK®第8版のテーラリングに関する専門メディアの解説を踏まえて、編集部が実務運用として構成したものです。

なぜ感覚で判断できないのか:第8版でテーラリングの位置づけが変わった

PMBOK®ガイド第7版では、テーラリングは12の原理・原則のうちの1つという扱いでした。『状況に応じて調整してよい』という考え方そのものが、守るべき原則の一項目に並んでいたということです。第8版では、この12原則が6原則に統合されました。6原則は、全体的な視点の採用、価値の重視、品質をプロセスと成果物に組み込むこと、責任を果たすリーダーであること、持続可能性を全プロジェクトエリアに統合すること、エンパワメントされた文化の構築です。

この統合にあたって、テーラリングは6原則の1項目としては残りませんでした。代わりに、プロセスを選ぶ根拠そのものという位置づけに変わり、ガバナンス・ステークホルダー・スコープ・スケジュール・資源・リスク・ファイナンスという7つのパフォーマンス領域それぞれに、状況に応じたテーラリングの検討ポイントが追加されています。7つの領域を現場の作業に置き換えた整理はPMBOK®第8版の7つのパフォーマンス領域を、実際の作業に落とすにまとめてあります。

原則の1つとして『調整してよい』と言われる状態と、7つの領域それぞれで『この領域では何を検討すべきか』と具体的に問われる状態は、実務上の重みが違います。前者は『好きに決めてよい』と読めてしまいますが、後者は『領域ごとに、何を省くかを説明できる状態にしておくこと』を求めています。この記事のチェックリストは、この『説明できる状態』を作るための型です。

項目1〜3を深掘り:どの領域に穴が開き、何で埋め合わせ、契約と噛み合うか

項目1は、省く手続きがパフォーマンス領域のどこに対応するかを、最初に名指しする作業です。たとえば定例の進捗報告を隔週から月次に減らすなら、これはスケジュール領域とガバナンス領域の両方に関わります。領域を名指しできないまま『まあ大丈夫だろう』で省くと、後になって『あの領域の誰も見ていなかった』という抜けが起きます。

項目2は、省いた手続きが元々果たしていた目的を特定し、その目的を別の軽い手段で満たせるかを確認する作業です。たとえば書面での変更承認を減らす代わりにチャットでの即時合意と週次の記録を組み合わせる、といった置き換えです。目的を特定せずに『手間を減らす』ことだけを目的にすると、統制のレベルがそのまま下がります。

項目3は、契約形態との整合です。作業範囲記述書や固定価格契約で外部ベンダーが成果物を納める形になっている場合、検収の手続きや報告の頻度は契約条件の一部になっていることがあります。社内の都合だけで省略を決めると、契約上の義務を果たせなくなる可能性があります。社内だけで完結する判断かどうかを、まずこの項目で切り分けます。

項目4〜7を深掘り:合意・責任・見直し・記録

項目4と5は、第8版でのテーラリングの位置づけの変化と関わります。第7版のテーラリングは『原則の一つ』という補足的な位置づけでしたが、第8版ではプロジェクト全体を通す前提として扱われるようになったと専門メディアは解説しています。結果が出なかったときに『環境が悪かった』で済ませず、誰の判断だったかを遡れることが重視される、という変化です。省略を決めた人と、合意を取った相手を記録に残すのは、この変化に対応するためです。

項目6は、一度決めた省略を固定しないための項目です。着手時点では適切だった省略が、プロジェクトの規模や契約が変わった後も見直されずに残っているケースはよくあります。ガバナンス領域で決める報告の頻度や会議体の設計と同じタイミングで、省略の見直し日も一緒に決めておくと、別々に管理する手間が減ります。

項目7は、同じ説明を繰り返さずに済むための記録です。『なぜ省いたか』が書面になっていないと、新しく参加したメンバーや、後から入った監査担当に毎回口頭で説明することになります。プロジェクト計画書の中に、テーラリングの判断を書く欄を1つ用意しておけば、7項目のうち4〜7はその欄を埋める作業として扱えます。

誤解しやすい点:テーラリング=簡略化ではない

テーラリングを『省略の許可』として使う誤解はよく起きます。しかしテーラリングは、プロジェクトの環境と目標に合わせて、アプローチ・ガバナンス・プロセス・関与の方法・ツールを意図的に調整することであり、手間を減らすことそのものが目的ではありません。項目2の『代替手段』を用意せずに手続きだけを削ると、統制のレベルがそのまま下がり、テーラリングではなく単純な省略になります。

もう1つの誤解は、テーラリングを着手時の1回限りの判断だと考えることです。開発アプローチを予測型・適応型・ハイブリッド型のどれにするかという大きな判断も、プロジェクトの進行中に前提が変われば見直す対象です。項目6の見直しタイミングは、この大きな判断にも、個々の手続きの省略判断にも、同じように当てます。

PMP試験との接続:テーラリングの判断は、状況問題の消去法と地続き

テーラリングの考え方は、PMP試験の対策とも接続します。PMPの状況問題で選択肢に迷ったときの判断フレームで整理した5つの消去サインのうち、『確認・評価を飛ばしている』は、この記事の項目1・2を飛ばした選択肢に当たります。影響度を見ずに対応だけを決めている選択肢や、計画や登録簿を見ずに動いている選択肢は、テーラリングの判断としても、試験の解答としても、同じ理由で退けられます。

状況問題では、『標準プロセスをすべて実施すべきか、簡略化すべきか』という設問自体が出ることがあります。この記事の7項目を知っていれば、『一律に全部やる』『現場の裁量で省略する』のどちらが極端な選択肢で退けられやすいかを判断しやすくなります。試験全体の対策はPMP®試験対策ガイドを参照してください。

まとめ:明日やる3つ

まず、いま『これは本当に要るのか』と迷っている手続きか成果物を1つ選び、この記事の7項目をその場で当てます。空欄になった項目が、その省略がまだ判断ではなく放置であることを示します。項目1・2が空欄なら、どの領域に穴が開き、何で埋め合わせるかをその場で決めます。

次に、すでに省略を決めている手続きについて、項目5〜7(判断した人・見直し日・記録)が埋まっているかを確認します。埋まっていない場合は、判断した人の名前と次に見直す日を、プロジェクト計画書かテーラリングの記録に今日のうちに書き加えます。

最後に、この7項目をプロジェクト計画書のひな形に組み込みます。新しいプロジェクトの着手時だけでなく、進行中のプロジェクトで『このレビューは要るのか』と聞かれたときにいつでも当てられる状態にしておき、プロジェクトの前提が変わるたびに同じ7項目で見直します。

出典・参考

公開情報および各機関の一次情報をもとに、PMアンカー編集部が作成・更新しています。事実関係は出典を明記し、内容は定期的に見直しています。