PMP試験の基礎
PMPの状況問題で選択肢に迷ったときの判断フレーム:3つの質問と5つの消去サイン
状況問題を解く3つの質問
状況設定(シナリオ)問題は、知識を知っているだけでは解けません。登場する役割・工程・対応のどれもが正しそうに見える選択肢を2つか3つ残したあと、最後の1つに絞る工程が別に要ります。次の3つの質問を、この順番で当ててください。
選択肢を絞る3つの質問(この順に当てる)
- 質問1誰の権限かその決定・対応は、問題文に出てくる「あなた(PM)」の権限の範囲内か。範囲を超える選択肢と、逆に範囲内なのに上に投げている選択肢を先に見分ける。
- 質問2今の工程で正しいか問題文の状況は、計画・実行・監視のどの工程にあるか。工程を1段飛ばしている選択肢(評価や確認を経ずに対応を確定している、など)を消す。
- 質問3次の一手か、後始末かその選択肢は、先に向けた対応(次の一手)か、すでに起きたことの後始末(原因追及・責任の所在)か。状況文が求めているのがどちらかを見極め、違う側の選択肢を消す。
選択肢を消す5つのサイン
3つの質問を当てる前に、次の5つのサインに当たる選択肢を先に除外しておくと、残りの検討が速くなります。
新ECOの状況問題で、選択肢を消す5つのサイン
| サイン | 具体的な形 | 消す理由 |
|---|---|---|
| 権限を越えている | PMが単独で予算・納期・契約の確定事項を変更している | 質問1(誰の権限か)に反する。確定事項の変更はスポンサーやステアリングコミッティの承認工程を経る |
| 確認・評価を飛ばしている | 影響度を見ずに対応だけ決めている、計画や登録簿を見ずに動いている | 質問2(今の工程で正しいか)に反する。評価が先、対応はその後 |
| 症状にだけ対応している | 原因を特定せず、表面化した問題だけを個別に処理している | 再発を防げない。状況問題は原因の切り分けまでを問うことが多い |
| 問題文にない前提を作っている | 追加の予算・人員・期間を、問題文に書かれていないのに選択肢の中で前提にしている | 出された事実の中で解くのが原則。前提を増やす選択肢は多くの場合誤り |
| 個人を名指しで非難・処罰している | 原因を人に帰属させ、懲戒や責任追及を対応として選んでいる | 協調的なチーム運営という方向と逆。原因は仕組み・プロセス側に求める選択肢が残りやすい |
型を当てはめる例
次のような状況を想定します。「新機能のリリース直前、QAチームから重大な不具合の報告が入った。経営層はリリース日を変えないよう強く求めている。あなたはPMとして、次に何をするか」という設問に、4つの選択肢があるとします。
4つの選択肢に、3つの質問と5つのサインを当てる
| 選択肢 | 当たるサイン/質問 | 判定 |
|---|---|---|
| A. 経営層の指示どおり、QAの報告を保留してリリースを進める | サイン2(確認・評価を飛ばしている)。影響度を評価する工程を経ていない | 消す |
| B. 不具合を見落としたチームリーダーを個別に呼び出し、原因を追及する | サイン5(個人を名指しで非難)。質問3では後始末側の対応で、今求められている次の一手ではない | 消す |
| C. 不具合の影響度と、延期・限定リリース・修正後リリースの各選択肢をコスト・リスクとともにスポンサーへ提示し、意思決定を仰ぐ | 質問1(権限内:評価と提示まではPMの役割)、質問2(評価という工程に対応)、質問3(次の一手)。サインに該当しない | 残す |
| D. 自分の判断でリリース日を1週間延期すると関係者に通知する | サイン1(権限を越えている)。リリース日の確定事項を単独で変更している | 消す |
なぜこの型が要るのか:出題の中心が「状況の判断」に動いた
2026年7月9日、PMP試験は新しいECO(Exam Content Outline、試験内容概要)に切り替わりました。PMP試験対策ガイドで整理したとおり、出題形式は四択だけでなく、詳細な状況説明を読んで一連の設問に答えるケース・シナリオ問題や、図表を読み取るグラフィックベース問題を含む6種類に増えています。
ドメインの出題比率も、人(People)33%・プロセス(Process)41%・ビジネス環境(Business Environment)26%に変わりました。PMPとは?2026年7月の新試験に対応した基礎知識で確認したとおり、ビジネス環境は旧ECOの8%から3倍以上に拡大しています。さらにECOは、予測型・適応型(アジャイル)・ハイブリッドの3つのアプローチが、特定のドメインに固まらずすべてのタスクに横断して現れると明記しています。
この3点を合わせると、出題が問うものが「用語を知っているか」から「状況を読んで、今どう動くのが正しいか判断できるか」に移っていることが分かります。知識の暗記だけでは、状況問題で残る2〜3個の選択肢から最後の1つを選べません。ここに、知識とは別の「選択肢の絞り方」という技術が要る理由があります。
質問1を深掘りする:権限の境界線
状況問題には、PM・スポンサー・ステアリングコミッティ・機能部門長・チームメンバーのいずれかの役割が必ず登場します。正しい選択肢は、多くの場合「あなた(PM)」の権限の範囲内に収まる対応か、範囲を超える場合に正しい相手へ判断を上げる対応のどちらかです。PMBOK®第8版の7つのパフォーマンス領域を、実際の作業に落とすで整理したガバナンス領域は、現場では「誰が何を決めるか、どこまでなら現場で判断してよいか」という決裁の一覧に対応します。この一覧を思い出せると、権限を越えた選択肢を即座に見分けられます。
権限を超える場合に、判断をどこへ、どの基準で上げるかがエスカレーションです。状況問題では、エスカレーション自体が正解になることもあれば、エスカレーションせずPMの裁量で対応すべき場面で安易に上に投げている選択肢が誤答として置かれていることもあります。どちらに当たるかは、問題文に書かれた影響度(コスト・納期・契約・安全)が、あらかじめ決められた閾値を超えているかどうかで判断します。閾値そのものが本文に書かれていない場合は、「現時点で確定できることと、確定できないことを分けて、確定できない部分だけを上位者に判断してもらう」という選択肢が、権限を越えずに次へ進む対応になります。
質問2・3を深掘りする:工程の正しさと、次の一手
質問2は、状況文がプロジェクトのどの工程にあるかを特定する質問です。計画段階であれば、まだ存在しない基準やベースラインを前提にした選択肢は誤りです。実行・監視段階であれば、すでにある変更管理の手続きを経ずに変更を確定している選択肢は誤りです。工程を正しく特定できれば、「その工程でまだやっていないはずの作業」を前提にした選択肢を機械的に消せます。
質問3は、対応が未来に向いているか、過去の後始末に向いているかを見分ける質問です。状況文が「今後どうするか」を聞いているのに、原因の追及や責任の所在を答える選択肢を選ぶと、質問の方向とずれます。逆に状況文が「何が起きたのかを特定してから対応を決めたい」という場面であれば、原因を調べずに対応だけを先に決める選択肢のほうがずれています。どちらの方向を向いた設問かは、設問文の最後の一文(「次に何をするか」「まず何をすべきか」「最も適切な対応は」など)で判定できます。
この3つの質問は、PMP試験の勉強法で扱った模擬試験の分析とも噛み合います。間違えた問題を記録するとき、「正解が正解である理由、特に自分の選択肢が退けられる理由」を書く方法を紹介しましたが、その理由の多くは、今回の3つの質問のどれかに対応しています。間違いノートに書く理由を、質問1・2・3のどれに当たるかで分類しておくと、自分がどの質問でよく外しているかが見えてきます。
模擬試験で使う:点数より、どの質問で外したかを見る
この型は、知識の学習が終わってから使うものではありません。模擬試験の初回から、間違えた問題ごとに「質問1・2・3のどこで判断を誤ったか」「5つのサインのどれに気づけなかったか」を記録してください。知識不足で間違えた問題と、知識はあるのに判断の順番を誤って間違えた問題は、対処がまったく違います。後者が多いなら、学習時間を増やすより、この3つの質問を当てる練習を積むほうが点数に効きます。
受験全体の流れの中でこの型をどこに置くかは、PMP試験対策ガイドの学習計画の段階に当たります。ECOのタスク学習と模擬試験の演習に、この判断フレームを組み合わせて仕上げ期に備えてください。
出典・参考
PMI公式のPMP試験内容概要(ECO)をもとに、PMアンカー編集部が作成しています。ECOは2026年7月9日に改定され、出題形式が6種類に、ドメイン比率が人33%・プロセス41%・ビジネス環境26%に変わりました。