PMP試験の基礎

PMP試験でアジャイル用語に迷ったとき使う、Scrum GuideとPMBOK®の対応表

Scrum GuideとPMBOK®系の実務の対応表(迷ったときはここを見る)

PMP試験でアジャイル・ハイブリッドの出題が増え、スクラムの用語とPMBOK®の用語が混在する設問が増えています。デイリースクラム・スプリントレビュー・スプリントレトロスペクティブという3イベントの目的・時間枠・参加者・検査対象はスクラムの進め方で整理しました。本記事はその続きとして、Scrum Guideの用語とPMBOK®系の実務でどう対応づけられることが多いか、そして2つが完全に同じではない点に絞って整理します。

この表は完全な1対1の置き換えではありません。「近いが、権限・時期・相手が違う」という欄を埋めるための表です。次の章で、PMP試験の選択肢がこの違いをどう突いてくるかを見ます。

Scrum Guideの用語とPMBOK®系の実務で近い扱いをされるもの(完全に同じではない点つき)

Scrum Guideの用語PMBOK®系の実務で近い扱いをされるもの完全に同じではない点
デイリースクラム(Daily Scrum)進捗報告(ステータスレポート)デイリースクラムは開発者が自分たちのために行う15分の検査で、PMや上長への報告が目的ではない。進捗報告は関係者へ事実を伝える報告
スプリントレトロスペクティブ(Sprint Retrospective)教訓(レッスンズラーンド)レトロスペクティブは改善項目を次のスプリントバックログに乗せるところまでが範囲。レッスンズラーンドは知見を記録する活動で、次に実行する約束までは含まない
プロダクトオーナー(Product Owner)ステークホルダーの一部プロダクトオーナーはスクラムチームの内部にいてバックログの優先順位を日々決める。ステークホルダーは必ずしもチームの内部にいない
インクリメント(Increment)成果物(デリバラブル)インクリメントは使用可能な状態であることが条件。デリバラブルは使用可能でない中間文書・設計書も含む、より広い概念
表の第2列「PMBOK®系の実務で近い扱いをされるもの」は、PMIの規定文書に明記された公式な対応ではなく、PMアンカー編集部による対応づけです。Scrum Guide側の規定は出典に明記した一次情報にもとづきます。出典:Scrum Guide「The Scrum Guide」(2026年11月4日確認)。

試験の選択肢で紛らわしい箇所

新ECOでは、予測型・適応型・ハイブリッドの3つのアプローチが、人・プロセス・ビジネス環境のすべてのドメインを横断して出題されます。この結果、1つの設問文にスクラムの用語とPMBOK®の用語が混在し、同じ意味だと思って選んだ選択肢が誤答になる場面が増えています。

出やすい誤答の仕掛けは3つです。出題形式・ドメイン比率はPMPの状況問題で選択肢に迷ったときの判断フレームで整理した新ECOの規定にもとづきます(下表の設例はPMアンカー編集部が作成)。

出やすい誤答のパターン

出題の形誤答の仕掛け正しい切り分け
「デイリースクラムで進捗を上長に報告する」という選択肢デイリースクラムの対象者を開発者からPMや上長に差し替えているデイリースクラムは開発者が自分たちのために行う検査。上長への報告が目的の選択肢は、この時点で対象者がずれている
「レトロスペクティブの結果を教訓として記録するだけでよい」という選択肢レトロスペクティブの最後の一手(改善をスプリントバックログに乗せる)を欠いているレトロスペクティブは記録して終わりではなく、次のスプリントで実行する項目まで決める
「プロダクトオーナーの承認を得てから納期を延期する」という選択肢プロダクトオーナーの権限をPMやスポンサーの権限と同一視している納期(スケジュールベースライン)の変更は、プロジェクトの変更管理の手続きを経る。プロダクトオーナーの権限はプロダクトバックログの優先順位に及ぶが、契約・納期の確定事項には及ばない

現場でどちらの言葉を使うべきか

試験の外では、この表をどちらの言葉に統一すべきかという問題として読み替えられます。答えは「統一しない」です。実際にスクラムで動いているチームの中ではプロダクトオーナー・スクラムマスター・インクリメントという言葉を使い、チームの外、特に稟議や契約に関わるステークホルダーへ説明するときはPMBOK®側の言葉(成果物、変更管理、ガバナンス)に言い換える。この切り替えができるかどうかが、ハイブリッド環境で混乱せずに動けるかの分かれ目になります。

PMBOK®第8版が7つのパフォーマンス領域で整理した管理対象(PMBOK®第8版の7つのパフォーマンス領域を、実際の作業に落とす参照)は、アジャイルで進めるプロジェクトにも等しく当てはまります。領域の名前が変わるわけではなく、領域の中身をスクラムのイベント・役割で満たすという関係です。デイリースクラムはスケジュール領域の「進捗をいつ検査するか」を満たす1つの手段であり、レトロスペクティブはリスクやプロセスの領域の「何を改善するか」を満たす1つの手段だと捉えると、PMBOK®の構造とスクラムの実務がつながります。

チーム内とチーム外で使う言葉の切り替え表

チーム内で使う言葉チーム外(稟議・契約・報告)で使う言葉切り替える場面
インクリメント成果物顧客への成果物提出・検収のタイミング
レトロスペクティブの改善項目是正措置・教訓品質会議・変更管理委員会(CCB)への報告
スプリントゴール中間マイルストーン経営層・スポンサーへの進捗報告
プロダクトオーナーの合意ステークホルダーの承認契約・予算に関わる稟議
デイリースクラムで分かったこと進捗状況定例の週次・月次報告
左列はスクラムチームの内部で、右列は稟議・契約・報告など社内外のステークホルダーに向けて使う言葉の例です。場面に応じて言葉を切り替えると、相手に権限や責任の所在を誤解させずに伝えられます。

なぜこの混乱が増えたか:新ECOが3つのアプローチを全ドメインに広げた

この対応表が要る理由は、試験そのものの変化にあります。2026年7月9日に切り替わった新ECOは、予測型・適応型・ハイブリッドの3つのアプローチを特定のドメインに固定せず、人・プロセス・ビジネス環境のすべてに横断させています(PMPとは?2026年7月の新試験に対応した基礎知識参照)。1つの設問の中に予測型の文脈とスクラムの用語が同時に出てくる出題が起こり得ます。

用語がずれて混乱するのは、学習不足ではなく、2つの異なる体系を同じ試験の中で同時に扱わされているからです。Scrum Guideは独立した原典であり、PMBOK®ガイドとは発行元も改訂の周期も別です。対応表で違いを先に押さえておけば、設問文にどちらの体系の言葉が出てきても、その場で定義を思い出す時間を節約できます。

出典・参考

公開情報および各機関の一次情報をもとに、PMアンカー編集部が作成・更新しています。事実関係は出典を明記し、内容は定期的に見直しています。